LEDには定格電圧と定格電流が定められており自動車に取り付けるには定格を越えないよう抵抗を直列に接続しなければなりません。また、自動車は電圧変動が大きい(らしい)のでそれに強いCRDの使用が寿命の点からも進められています。
しかしながらLEDの寿命は一般的に10万時間とか5万時間とか言われています。寿命を5万時間として1日6時間LEDを点灯して毎日車に乗るとすると単純計算で22.8年経過するとLEDが点灯しなくなる計算になります。ただし、LEDの寿命はメーカーでも完全に数式か出来ていないので単純に考えることは出来ませんが、あまり良くない条件で使用して10年経つとLEDが点灯しなくなるとしても平均速度30km/hと仮定すると走行距離は何と657,000kmにも達します。これは明らかにオーバースペックになるでしょう。
また、CRDは定格電流がありそれはE-153で13[mA]、E-103を2個並列接続しても19[mA]までになります。さらにバックランプなどのLEDを多く使用する場所やポジションランプなどに電球自体が小さいものはスペースの確保が問題になります。発熱する場所は冷却を確保するかスペースを確保することが重要なので、前者は難しいとしても後者は出来るだけ大きな空間を確保したいものです。このためE-103の2個仕様は空間の確保からやや矛盾することとなってしまいます。
LEDの定格は20[mA](at 60℃)ですが、周辺の温度が20℃では30[mA]まで流すことが可能なのでCRDではこの電流を確保しようとすると数個を並列接続しなければなりません。
別にCRDの安定性に疑問を感じているわけではなく、CRDの電圧変動による電流安定性は十分解っているつもりです。しかしながらLEDの定格電圧によっては3個(at 3.6[V])までしか接続できなくなります。
ここからがこの項目の本題ですが、CRDでは接続不可能なLEDの直列接続個数を実現できる抵抗について、電圧変動による電流変動がどの程度発生するのか簡単に考えてみたいと思います。
まず、自動車のエンジン運転中の電圧は14.4[V]とされていますが、私の車でも安いテスターで計測すると同じ電圧でした。また、エンジン停止中の電圧は12.0[V]とされていますが、私の車では13.0[V]でした。
そこで電圧はCRD(LED使用個数と供給電流変動)でも比較対照にしたこの3種類の電圧について考えたいと思います。
回路は通常の直列接続として上流側に抵抗を、下流側に逆接続破損防止用に整流用ダイオード(0.6〜0.8[V]消費:少なく見積もって0.6[V]とする)を、その間に任意の個数のLEDを接続するものとします。また、電流は念のため20[mA](at 14.4[V])となるように抵抗を決めるものとします。抵抗はE24シリーズ抵抗値一覧から選択するとしてちょうど良い抵抗が無い場合は安定性を確保する点から大きな抵抗(電流が減少する方向)の物を選ぶことにします。抵抗は14.4[V]を基本にするので各電圧でも変えないこととします。
ポジションランプなどをLED化する際に使用するLEDは通常白色(車検に通らないことを前提に青色)を使います。このLEDは3.6V 20mAが定格となっています。ただし、14.4[V]時の抵抗が0を下回る場合は抵抗電圧の欄にLED1個あたりの印加電圧を書いています。
LED個数 | 抵抗電圧[V] | 抵抗[Ω] | 回路電流[mA] | 抵抗消費電力[W] |
1 | 10.2 | 510 | 20.0 | 0.204 |
2 | 6.6 | 330 | 20.0 | 0.132 |
3 | 3.0 | 150 | 20.0 | 0.060 |
4 | 3.45[V/pc] | 0 | 13 | - |
LED個数 | 抵抗電圧[V] | 抵抗[Ω] | 回路電流[mA] | 抵抗消費電力[W] |
1 | 8.8 | 510 | 17.3 | 0.152 |
2 | 5.2 | 330 | 15.8 | 0.082 |
3 | 1.6 | 150 | 10.7 | 0.017 |
4 | 3.10[V/pc] | 0 | 2 | - |
LED個数 | 抵抗電圧[V] | 抵抗[Ω] | 回路電流[mA] | 抵抗消費電力[W] |
1 | 7.8 | 510 | 15.3 | 0.119 |
2 | 4.2 | 330 | 12.7 | 0.054 |
3 | 0.6 | 150 | 4.00 | 0.002 |
4 | 2.85[V/pc] | 0 | 1 | - |
このLEDは1.9V 20mAが定格となっています。ただし、14.4[V]時の抵抗が0を下回る場合は抵抗電圧の欄にLED1個あたりの印加電圧を書いています。
LED個数 | 抵抗電圧[V] | 抵抗[Ω] | 回路電流[mA] | 抵抗消費電力[W] |
1 | 11.9 | 620 | 19.2 | 0.228 |
2 | 10.0 | 510 | 19.6 | 0.196 |
3 | 8.1 | 430 | 18.8 | 0.153 |
4 | 6.2 | 330 | 18.8 | 0.116 |
5 | 4.3 | 220 | 19.5 | 0.084 |
6 | 2.4 | 120 | 20.0 | 0.048 |
7 | 0.5 | 27 | 18.5 | 0.009 |
8 | 1.73[V/pc] | 0 | 5 | - |
LED個数 | 抵抗電圧[V] | 抵抗[Ω] | 回路電流[mA] | 抵抗消費電力[W] |
1 | 10.5 | 620 | 16.9 | 0.178 |
2 | 8.6 | 510 | 16.9 | 0.145 |
3 | 6.7 | 430 | 15.6 | 0.104 |
4 | 4.8 | 330 | 14.5 | 0.070 |
5 | 2.9 | 220 | 13.2 | 0.038 |
6 | 1.0 | 120 | 8.3 | 0.030 |
7 | (-0.9) | 27 | - | - |
8 | 1.55[V/pc] | 0 | - | - |
LED個数 | 抵抗電圧[V] | 抵抗[Ω] | 回路電流[mA] | 抵抗消費電力[W] |
1 | 9.5 | 620 | 15.3 | 0.146 |
2 | 7.6 | 510 | 15.0 | 0.113 |
3 | 5.7 | 430 | 13.3 | 0.076 |
4 | 3.8 | 330 | 11.5 | 0.044 |
5 | 1.9 | 220 | 8.6 | 0.016 |
6 | 0 | 120 | - | - |
7 | (-1.9) | 27 | - | - |
8 | 1.43[V/pc] | 0 | - | - |
これらの表を見ると14.4[V]時に20[mA]を流すように計算した抵抗を組んだ回路では3.6[V]LEDでは3個以上、1.9[V]LEDでは5個以上接続するとエンジン停止時にLEDが暗くなるか発光しなくなることがわかります。
このままでは使い物にならないので20[mA]と言う電流を見直してみることにします。NSPW310BSは20[mA](at 80℃)ですが30[mA](at 40℃)まで電流を流すことが可能みたいです。そこまで流してしまうと発熱の問題があるので周辺温度をおおよそ考慮して28[mA]を上限に抵抗を決めてみたいと思います。
LED個数 | 抵抗電圧[V] | 抵抗[Ω] | 回路電流[mA] | 抵抗消費電力[W] |
1 | 10.2 | 390 | 26.2 | 0.267 |
2 | 6.6 | 240 | 27.5 | 0.182 |
3 | 3.0 | 110 | 27.3 | 0.0818 |
4 | 3.45[V/pc] | 0 | 13 | - |
LED個数 | 抵抗電圧[V] | 抵抗[Ω] | 回路電流[mA] | 抵抗消費電力[W] |
1 | 8.8 | 390 | 22.6 | 0.199 |
2 | 5.2 | 240 | 21.7 | 0.113 |
3 | 1.6 | 110 | 14.5 | 0.023 |
4 | 3.10[V/pc] | 0 | 2 | - |
LED個数 | 抵抗電圧[V] | 抵抗[Ω] | 回路電流[mA] | 抵抗消費電力[W] |
1 | 7.8 | 390 | 20.0 | 0.156 |
2 | 4.2 | 240 | 17.5 | 0.074 |
3 | 0.6 | 110 | 5.46 | 0.003 |
4 | 2.85[V/pc] | 0 | 1 | - |
LED個数 | 抵抗電圧[V] | 抵抗[Ω] | 回路電流[mA] | 抵抗消費電力[W] |
1 | 11.9 | 430 | 27.7 | 0.329 |
2 | 10.0 | 360 | 27.8 | 0.278 |
3 | 8.1 | 300 | 27.0 | 0.219 |
4 | 6.2 | 240 | 25.8 | 0.160 |
5 | 4.3 | 160 | 26.9 | 0.156 |
6 | 2.4 | 91 | 26.4 | 0.063 |
7 | 0.5 | 18 | 27.8 | 0.014 |
8 | 1.73[V/pc] | 0 | 5 | - |
LED個数 | 抵抗電圧[V] | 抵抗[Ω] | 回路電流[mA] | 抵抗消費電力[W] |
1 | 10.5 | 430 | 24.4 | 0.256 |
2 | 8.6 | 360 | 23.9 | 0.205 |
3 | 6.7 | 300 | 22.3 | 0.150 |
4 | 4.8 | 240 | 20.0 | 0.096 |
5 | 2.9 | 160 | 18.1 | 0.053 |
6 | 1.0 | 91 | 11.0 | 0.011 |
7 | (-0.9) | 18 | - | - |
8 | 1.55[V/pc] | 0 | - | - |
LED個数 | 抵抗電圧[V] | 抵抗[Ω] | 回路電流[mA] | 抵抗消費電力[W] |
1 | 9.5 | 430 | 22.1 | 0.210 |
2 | 7.6 | 360 | 21.1 | 0.160 |
3 | 5.7 | 300 | 19.0 | 0.108 |
4 | 3.8 | 240 | 15.8 | 0.060 |
5 | 1.9 | 160 | 11.9 | 0.023 |
6 | 0 | 91 | 0 | - |
7 | (-1.9) | 18 | - | - |
8 | 1.43[V/pc] | 0 | - | - |
常用電圧である14.4[V]時の電流を増加している分エンジン停止時にもLEDを発光させることの出来る接続可能数が増加しているものの3.6[V]LEDでは同じ3個以上、1.9[V]LEDでは6個以上接続すると暗くなるか発光しない可能性があります。また、20[mA]と比較して抵抗値が減少しているのでLEDの自己発熱による電圧変動が発生して電流値が増加するものと思われます。
これらを踏まえるとエンジン運転の有無に関わらずある一定の発光を求めるのならばCRDは非常に有効に働いてくれることがわかります。また、電流安定性にも優れ抵抗と比べて長寿命化に貢献してくれるものと考えられます。
ただし、それはLED接続数が少ない若しくは長寿命が必要と言う条件にのみ当てはまります。
寿命については定格値で使用し一般的な寿命の半分と考えても点灯させたままでも10年は使用可能です。ここまでの寿命は必要ないという場合や電流値を細かく決めたい場合(後半で考察した条件)やランプはエンジンを運転させているときしか絶対に使わない(A/Cバックランプ、バックランプ)場合はその場所で最適値を取る抵抗の使用が有利になります。実際自動車メーカーも必要以上のオーバースペックになり過ぎないように電流値を決めているようです。
ここからはCRDの項目と同じく整流用ダイオードを使用しないときの抵抗値を計算してみたいと思います。
注:整流用ダイオード無しを推奨しているのではありません。スペースがあるのならば寿命(その減少が車の寿命と比べて考慮すべきかどうかはわかりませんが)の問題から整流用ダイオードを使用したほうが良いです。あくまでスペースの都合上設置できない場合と言う前提の話です。
その前に製造誤差が大きいと言われている白色LEDを使用して、誤差がどのくらいあるのかを計算してみたいと思います。
実験に使用したものはBOSCHのOptima LEDです。これを分解するとLEDと抵抗(430[Ω])が使用されています。
これをAC-DCコンバーター(13.8[V])に接続してテスターを直列接続すると約24[mA]の電流が流れています。LEDの自己発熱を確かめるために室温約20[℃]でしばらく放置しておきましたが安定性は良いみたいです。
で、これまで使用した計算式で電流値を計算すると
(13.8-3.6)÷430=0.0237[A]=23.7[mA]
ほぼ実験と同じ値が出てきました。
安定性が良いと書きましたがこれは抵抗がある程度大きい場合に適用されるようです。
もう一つ実験ですがオーディオQで破損すると言われるLED4個直列仕様での電流値ですが、最初は20[mA]程度の電流値ですが見る見るうちに電流が増加していき室温約20[℃]で約30[mA]まで達しました。これはちょっと危険ですね。特にポジションなどにこのタイプを使用するとおそらくすぐにLEDが点灯しなくなるか破損してしまう可能性があります。
これはまさに自己発熱性です。(LEDデータシートの Ambient Temperature vs. Forward Voltage参照)これを見ると周辺温度が増加するとLEDの要求電圧が減少します。要求電圧が減少すると電流が多く流れるようになりLEDはさらに発熱するようになり…と、どんどん発熱が促進されていきます。
一般に定格電圧と言われているのは周辺温度が20[℃]の時であり定格電圧は温度の変数になっています。データシートを見るとわかりますが周辺温度が低くななるほど定格電圧は高くなり、逆に周辺温度が高くなるほど定格電圧は低くなります。さらに供給電圧に変化が無ければ周辺温度が高くなると要求電圧は低くなりLEDにはより多くの電流が流れることになります。
また、定格電流は一般に20[mA]と言われているのは周辺温度が60[℃]の時の値であり、40[℃]までだと30[mA]、80[℃]だと10[mA]にまで減少します。
このLEDの特性(周辺温度と定格電圧と定格電流)のために電圧変動を少なくしLEDに流す電流を安定化する必要があるわけです。
LEDの自己発熱性による過剰電流供給を停止させるにはずばり安定した電流の供給です。それにはCRDを使用するか大きな値の抵抗を使用するかですが、前者については別の項目で考察しているのでそちらを参照してもらうとして抵抗の大きさですが…どのくらいあれば良いのでしょうね?とりあえず430[Ω]あれば安定性は絶対大丈夫みたいですが…
とりあえず周辺温度が20[℃]の時での抵抗値は以下のようになります。
注:LED1個の場合の抵抗は電流を20[mA]流す場合本当は540[Ω]ですが、E24系列の抵抗が見当たらなかったため余裕を持って最も近い値の大きい抵抗を使用しています。
LED個数 | 抵抗電圧[V] | 抵抗[Ω] | 回路電流[mA] | 抵抗消費電力[W] |
1 | 10.8 | 560 | 19.3 | 0.208 |
2 | 7.2 | 360 | 20.0 | 0.144 |
3 | 3.6 | 180 | 20.0 | 0.072 |
4 | 0 | - | 30.0以上? |
LED個数 | 抵抗電圧[V] | 抵抗[Ω] | 回路電流[mA] | 抵抗消費電力[W] |
1 | 9.4 | 560 | 16.8 | 0.158 |
2 | 5.8 | 360 | 16.1 | 0.093 |
3 | 2.2 | 180 | 12.2 | 0.027 |
4 | - | - |
LED個数 | 抵抗電圧[V] | 抵抗[Ω] | 回路電流[mA] | 抵抗消費電力[W] |
1 | 8.4 | 560 | 15.0 | 0.126 |
2 | 4.8 | 360 | 13.3 | 0.064 |
3 | 1.2 | 180 | 6.7 | 0.008 |
4 | - | - |
以下周辺温度が60[℃]の時の回路電流並びに抵抗消費電力
LED個数 | 抵抗電圧[V] | 抵抗[Ω] | 回路電流[mA] | 抵抗消費電力[W] |
1 | 11.0 | 560 | 19.7 | 0.221 |
2 | 7.7 | 360 | 21.4 | 0.154 |
3 | 4.35 | 180 | 24.2 | 0.087 |
4 | 1.0 | - |
LED個数 | 抵抗電圧[V] | 抵抗[Ω] | 回路電流[mA] | 抵抗消費電力[W] |
1 | 9.7 | 560 | 17.2 | 0.193 |
2 | 6.3 | 360 | 17.5 | 0.126 |
3 | 3.0 | 180 | 16.4 | 0.059 |
4 | - | - |
LED個数 | 抵抗電圧[V] | 抵抗[Ω] | 回路電流[mA] | 抵抗消費電力[W] |
1 | 8.7 | 560 | 15.4 | 0.173 |
2 | 5.3 | 360 | 14.7 | 0.106 |
3 | 2.0 | 180 | 10.8 | 0.039 |
4 | - |
周辺温度と抵抗値の関係ですが、おおよそ400[Ω]以上あれば周辺温度が多少上がろうとも回路電流にあまり変化はありません。と言うことは絶対的な安定性を求めるのならば抵抗1個に対してLEDは1個しか接続できないと言うことに…
これだったらCRDの方が良さそうですね。
LEDを2個以上直列接続する場合に定格電流である20[mA] at 60[℃]を越えないようにするにはもう少し大きな抵抗を接続する必要があります。この場合当然電流値は減少するため光度が減少することになりますが。