リテールクーラー

リテール:小売、小売店


AMD、IntelがNECやTOSHIBAなどのPCメーカー向けに販売するCPUに対して、小売店向けに卸されるCPUはリテール品とかBOX品などと言われています。
リテールクーラーとはこれら小売店向けに卸されるCPUの箱の中にセットで販売されるメーカー純正のクーラーを表しています。


まず、オーバークロックなどCPUに設計以上の負担をかけなければ不具合なく使用できるということを初めに書いておきます。


CPUを設計する際に、性能・発熱量(TDP)などから使用できるCPUの上限温度、ケースの上限温度、クーラーの熱抵抗値が決定されます。
これはAMDが発行しているデータシートに記入されています。


Phenom
Thermal Profiles A B C D E F G H I
Heat Sink Thermal Resistance [K/W] 0.29 0.18 0.30 0.29 0.18 0.42 0.44 0.19 0.32
Heat Sink Local Ambient [℃] 42 38 42 42 38 42 42 38 42
TDP [W] 95 125 95 65 140 65 65 125 95
Tj [℃] 69.55 60.5 70.5 60.85 63.2 69.3 70.6 61.75 72.4

AMD Family 10h Desktop Processor Power and Thermal Data Sheet


Thermal Resistance:熱抵抗
Local Ambient:周辺温度
TDP:最大放熱量(Thermal Design Power)
Tj:最大ジャンクション温度(CPU温度のようなもの:管理人計算値)
因みにThermal Profiles:Bの場合Tj=125*0.18+38=60.5


TDPが大きくなり、周辺温度を低く設計すると熱抵抗を低くせざるを得なくなります。熱抵抗は小さくなればなるほど多くの熱を発生することができ、CPUの温度を低くすることができます。


例えば、Thermal Profiles:Bで熱抵抗を0.18[K/W]から0.15[K/W]に減少させた場合
Tj=125*0.15+38=56.75
なので、リテールクーラーより3.75[℃]冷える計算になります。但し、周辺温度は一定とします。
これをもとにして熱抵抗を下げた場合を考察してみます。
Local Ambient=38[℃]
TDP=140[W] Tj=63.20[℃]
TDP=125[W] Tj=61.75[℃]
TDP=95[W] Tj=72.40[℃]
TDP=65[W] Tj=70.60[℃]


Tj
[℃]
Thermal Resistance [K/W]
0.05 0.06 0.07 0.08 0.09 0.10 0.11 0.12 0.13 0.14 0.15 0.16
TDP
[W]
140 -18.2 -16.8 -15.4 -14 -12.6 -11.2 -9.8 -8.4 -7 -5.6 -4.2 -2.8
125 -17.5 -16.25 -15 -13.75 -12.5 -11.25 -10 -8.75 -7.5 -6.25 -5 -3.75
95 -29.65 -28.7 -27.75 -26.8 -25.85 -24.9 -23.95 -23 -22.05 -21.1 -20.15 -19.2
65 -29.35 -28.7 -28.05 -27.4 -26.75 -26.1 -25.45 -24.8 -24.15 -23.5 -22.85 -22.2

これはデータシートに記載されている周辺温度を採用しましたが、これをもっと下げた場合(秋〜春)


Local Ambient=30[℃]

Tj
[℃]
Thermal Resistance [K/W]
0.05 0.06 0.07 0.08 0.09 0.10 0.11 0.12 0.13 0.14 0.15 0.16
TDP
[W]
140 -26.2 -24.8 -23.4 -22 -20.6 -19.2 -17.8 -16.4 -15 -13.6 -12.2 -10.8
125 -25.5 -24.25 -23 -21.75 -20.5 -19.25 -18 -16.75 -15.5 -14.25 -13 -11.75
95 -37.65 -36.7 -35.75 -34.8 -33.85 -32.9 -31.95 -31 -30.05 -29.1 -28.15 -27.2
65 -37.35 -36.7 -36.05 -35.4 -34.75 -34.1 -33.45 -32.8 -32.15 -31.5 -30.85 -30.2

Local Ambient=15[℃]

Tj
[℃]
Thermal Resistance [K/W]
0.05 0.06 0.07 0.08 0.09 0.10 0.11 0.12 0.13 0.14 0.15 0.16
TDP
[W]
140 -41.2 -39.8 -38.4 -37 -35.6 -34.2 -32.8 -31.4 -30 -28.6 -27.2 -25.8
125 -40.5 -39.25 -38 -36.75 -35.5 -34.25 -33 -31.75 -30.5 -29.25 -28 -26.75
95 -52.65 -51.7 -50.75 -49.8 -48.85 -47.9 -46.95 -46 -45.05 -44.1 -43.15 -42.2
65 -52.35 -51.7 -51.05 -50.4 -49.75 -49.1 -48.45 -47.8 -47.15 -46.5 -45.85 -45.2

これは単純計算なので実際はここまで下がることはないと思いますが、熱抵抗を下げるor周辺温度を下げることによりCPUの温度を下げることができます。
前者は高性能クーラーへの交換、後者はCPUクーラー周辺へ十分なエアフローを与えるということになります。


TDPが95[W]、65[W]の熱抵抗は0.3[K/W]、0.4[K/W]なので上の表で考察した範囲のクーラーを使用した場合超静音(無音)仕様を作ることができるかも?


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