液晶ディスプレイ 応答速度

液晶ディスプレイの性能を表す用語の一つとして応答速度というのがあります。
これは画面の色が“黒→白→黒”と変える際に必要な時間で、この時間が短いほど映像の残像が少なくなりシャープな映像を得られます。
(液晶は元々動きに弱く残像が出やすいので家庭用テレビでは動きに強いという特性でプラズマテレビが好まれていた)


リフレッシュレートや垂直周波数と言われる数字はディスプレイへ入力させる信号の周波数であって、リフレッシュレートを高くしていっても液晶が変化するにはタイムラグが有るため液晶ディスプレイのみで応答速度という言葉が使われています。
つまり液晶が変化する速度が遅ければいくらリフレッシュレートを高めていっても仕方がないということになります。


例えば応答速度が12msならば“黒→白→黒”と変えるのに12ms(1,000分の12秒)必要ということを現しており、言い換えると1秒間に約83回黒から白へ書き換えることが出来るということになります。
変化するのに必要な時間ということで、正確には応答時間(英語表示ではResponse time)となり英語のほうが正しく表示されているのですが、何故か日本では非正確な応答速度が使われています。


リフレッシュレートと言われる映像の書き換えは60Hz(1秒間に60回)以上が必要と言われていますが、これを実現するために応答速度は16ms以下である必要があります。
例えば倍速と言われる120Hzならば8ms以下、4倍速と言われる240Hzならば4ms以下の必要があります。
因みに8倍速スキャンのLG Electronics 47LX9500は480Hzなので実に2ms以下である必要があります。


現在の液晶ディスプレイはおおよそ5ms程度の性能を持っており(上記16msの3倍の速度で1秒間に実に200回)、モデルに寄っては1msというのも有ります。
比較して一昔前の応答速度は25ms程度で1秒間に僅か40回の書き換えしか出来ずブラウン管モニターと比べてかなり残像感がある状態で、はっきり言うと動画を見るのには不適切(この記事を書いている2011年7月の私の環境)です。


一般的に言われる応答速度は“黒→白→黒”と変えるのに必要な時間ですが、実際の映像は黒と白だけではなくグレーである中間色がほとんどを占めているため、メーカーによりGTGと言われる応答速度やMPRTと言われる値が使用されることもあります。


GTG(Gray to Gray)

液晶の応答速度の向上に伴い従来用いられていた応答速度だけでは性能の差を表しづらくなりました。実際の動画で黒から白(又はその逆)への変化というのは状況としてはかなり少なく、動画での大多数は中間色同士の変化になっています。このため、中間色の変化を基準にした応答速度が用いられるようになっています。


具体的に説明をしますと、各色の階調は0〜255までの256段階で表されます。
0は液晶を閉じて光を全遮断し、255は液晶を開いて光を全通過させる状態ですが、一般的な色の変化である0〜255迄の内いくつかの階調をサンプルとして取り出し(メーカーにより異なる)その平均値を中間色変化の応答速度としています。


これはメーカーによりGTG(三菱ディスプレイ)やGray → Gray(BenQ)と表示されるように統一された規格ではありません。


色は1,677万色のフルカラーなのに中間色は256段階のいくつかのサンプル?これは液晶の仕組みを考えると理解することが出来ます。


液晶ディスプレイはバックライトから放出された白色光を液晶により遮ったり通過させることで色の明るさを変化させます。
光は液晶が変化することで明るさを変化させるのですが、液晶は変化するのに一定の時間が必要になり、この変化するのに必要な時間を応答速度と呼んでいるということになります。


光は三原色と言われるRGB(R=レッド、G=グリーン、B=ブルー)で全て表示することが出来ますが、液晶ディスプレイは非常に細かく区切りその場所ごとに決められた法則でRGBの各色カラーフィルターを配置することで、バックライトから放出された光が液晶により遮ったり通過させ、さらにカラーフィルターを通ることでその場所毎にRGBのいずれかの光が出てくるということになります。
液晶はどの場所でもほぼ均一でその後にカラーフィルターがあるので、液晶が変化する時間だけを考慮すれば良いので、中間色では256段階の中のいくつかをサンプルとして取り上げているということになります。


因みにRGBの3色でそれぞれ256段階ということは
256×256×256=1,677,216≒1,677万色
です。


こちらも一般的に言われる応答速度と同様に数値が少ないほど残像感が少なくなります。


MPRT(Moving Picture Response Time)

MPRTとはVESA(Video Electronics Standards Association)により策定して基準で、人間が感じる映像のぼやけというのを定量的に表す指標として主に三菱ディスプレイで用いられています。


映像にぼやけを感じる原因というのは幾つかあり、太陽光下の現実世界では映像の途切れは発生していないのに対して、ディスプレイは通常1秒間に60回映像を書き換え、映像同士の中間というのは存在せず非常に高速なコマ送りのような状態になっています。
このため、コマとコマの間により残像を感じるということになります。


この残像感を少なくするために、倍速液晶と言われる1秒間に60回映像を書き換えるところを倍の120回書き換える技術や、黒挿入と言われるコマとコマの間に黒い帯を挿入する技術、電圧を目標値よりも短時間だけ多く印加するオーバードライブという技術等があります。


これまでの応答速度で5msであったディスプレイをMPRTで表示すると22ms(必要最低限の16msよりも遅い)であったというデータもあるくらいです。
こちらも一般的に言われる応答速度と同様に数値が少ないほど残像感が少なくなります。


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