解像度とビットレートの関係

解像度、ビットレートの話の前にMPEG2の導入を説明しておきます。
極力わかりやすいように考えますので実際とは違う点もあると思いますが、お付き合いください。
導入の話は必要ない!という方は2個目の水平線から下をご覧ください。


映像というのは基本となるのは1枚の画像(静止画)で、画像が切り替わることで動きのある映像となります。
日本の放送だと通常1秒間に約30枚の画像が切り替わっていくことで映像が表示されていくようになっています。


この画像1枚1枚のことをフレームと言います。


画像ならば、1枚何kB等と表示されますが、映像ではこの画像が1秒間に30枚入ることになるので、1分で1,800枚、1時間だと108,000枚もの画像が入ることになります。
たとえば、DVD-Video画質で1枚40kBの映像があるとした場合

フレーム数 容量(kB) 容量(MB) 容量(GB)
1フレーム 1 40
1秒 30 1,200 1.2
1分 1800 72,000 72
1時間 108000 4,320,000 4,320 4.3

となり、1時間だと映像だけでDVD1枚が埋まってしまうことになります。
2時間だとDVD2枚…


この為、画像を切り替えるという方法では容量が大きくなりすぎているため、画像の圧縮という技術が用いられています。良く聞くMPEG2というのがDVD-Video等で使われている動画圧縮形式のひとつになります。


DVD-Videoの場合15フレームを1つの単位(GOP:0.5秒)として、3種類のフレームから構成されています。

・Iフレーム:1枚の画像(JPEGのような感じ)
・Pフレーム:I フレームと違う箇所を記した設計図(Iフレームより圧縮率が高い)
・Bフレーム:前後のフレームと違う箇所を記した設計図(Pフレームより圧縮率が高い)

Iフレームは完成図(=1枚の絵)、P・BフレームはIフレームとの違いを示したメモという感じでしょうか?
P・B フレームはメモなので、Iフレームよりもサイズが小さくなります。これにより1フレームの容量が少なくなり、全体として容量を少なくすることができます。これを圧縮と言います。


Iフレームだけだと絵ばかりなので容量が大きくなりますが、絵の違いを記したメモを間に挟むことで容量を少なくすることができます。当然Iフレームよりも圧縮率の高いPフレームが多いほうが容量は小さくなり、Pフレームよりもさらに圧縮率の高いBフレームが多いほうがさらに容量は小さくなります。


どの程度メモを挟むのか?ということですが、メモが多すぎるとメモを記した場所の元の絵がどのようなものだったものか分かりにくく(分からなく)なってしまいます。この分かりにくくなった状態がブロックノイズが発生しているという状態です。


ブロックノイズを極力発生させにくく(発生させないではない)するには容量の兼ね合い(妥協点)ということになります。

また、MPEG2の圧縮方式はMP3等と同じ非可逆圧縮です。
非可逆圧縮というのは、元の映像を圧縮して解凍した時に、元の映像そのままとはならない圧縮方式です。
ですが、可逆圧縮(解凍した時に元の映像そのままとなる圧縮方式)と比較して容量を少なくできるというメリットがあります。
このメリットを生かし、元の映像に近い映像になるように容量を調節して圧縮しているのです。


さあて、ようやく本題です。
ビットレートのページで書いた妥協点としてそれぞれの最大ビットレートがあり、同じ時間で比較するとビットレートが多いほど多くの情報を送ることができます。

非常に高くすれば非常に綺麗な映像を送ることができます(Iフレームばかりのような映像)が、有線ではなく無線で送る為(有線でも当然ノイズが発生しますが無線に比べ非常に低い)、ノイズの影響は無視できません。特に送る元(送信アンテナ)から受ける側(受信アンテナ)までの距離が遠ければ信号が弱くなっていきますし、金属を含んだ建物(ビルなど)があっても信号が弱くなっていきます。

デジタルの場合、0と1の信号で構成されているためノイズの影響は非常に受けにくくなっていますが、それでもノイズが限界を超えると映像や音声が途切れてしまいます。
これはビットレートが高ければ高いほど限界が低くなってしまいます。

この為、地上デジタルハイビジョン放送ではノイズの影響を極力受けないよう妥協点の最大値として16.8Mbpsを、BS・CSデジタルハイビジョン放送では24Mbpsを採用しているわけです。

まず、この妥協点の最大値が設定されました。

最大値は規格の上限値であって越えることができない値です。
これをもとにフルハイビジョンの1920×1080を考えたばあい、地上デジタルの最大ビットレートではPフレームよりも圧縮率の高いBフレームが多くなってしまいます。
Bフレームが多すぎる場合、ブロックノイズが多くなってしまい見るに堪えられない映像になってしまいます。
最大ビットレートが決められている状態で、ブロックノイズを極力出さないようにするにはどうすればよいのか?単純な方法ですが、Iフレーム(元の絵)の解像度が低ければ圧縮する前のフレームの大きさ自体が小さくなるのでBフレームを少なくすることができます。


テレビ放送 実際の解像度のページで書きましたが、地デジの解像度が1440×1080になっているのはこのためです。
地デジのビットレートでは1920×1080の解像度で映像を配信するには規格の上限値(ビットレート)が低いためこうせざるを得なかったということになります。


ビットレートを同じにして解像度の高いものと低いもので比較したことがあります。
後者は再生の際に拡大することになりますが、ブロックノイズの多い解像度の高い映像よりも、ブロックノイズの少ない解像度の低い映像のほうがはるかに綺麗に見ることができました。
当然、元の映像と比較して荒くなっているものの後者のほうが見られる映像になりました。
まあ、ブロックノイズが多くなった映像って見られたものじゃありませんからね。

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