燃料系統・磁石系燃費グッズの自作

今のところ理論が確立されていないのと、装着車両すべてに効果が得られるわけではないようなので絶対的に効果があるとは言い切れ無いのですが、良い感想を持つ方もいらっしゃるのでここでは効果があると仮定して考察していくことにします。


燃費削減等を目的として磁石を使ったものがあちこちから商品化されていますね。これらは主に2種類に分けることが出来ます。それは燃料配管の上から本体をかぶせるタイプ、燃料配管を切断して本体を配管に割り込ませるタイプです。
主に前者は比較的手軽に装着することが出来、後者はより効果を追求したものと言うことが出来ます。ここで双方の長所と短所を考えてみたいと思います。


かぶせるタイプ

長所

  • 比較的手軽に装着することが出来る
  • 値段が手ごろなものが多い(数千円から)

短所

  • 磁気が外に漏れやすい構造である場合が多い
  • 効果が期待しにくいもの(若しくは期待できない)物が多い

割り込ませるタイプ

長所

  • より効果が期待できる
  • 磁気をもらさない構造にしやすい

短所

  • 取り付けに十分な注意が必要(整備工場での装着が推奨されている)
  • 値段の高いものが多い(数万円)

効果があるかどうかわからんもんに金を払えるか!そんなら自分で作ってやる!と言う方が結構いらっしゃるみたいで磁石を作っているメーカーもそのようなユーザーを対象として販売を行っています。
例えば株式会社二六製作所等ですね。


自作するにはどうすればいいのか?まあそんなに大したことではないでしょう。見栄えの悪さと外部に漏れる磁力さえ気にしなければそんなに難しいものではないと思います。


ところで磁気を外に漏らさないようにするにはどうすれば良いのでしょう?実はある程度は漏れるのですが簡単な構造である程度磁力を遮断することが出来ます。右の図はヨークと言われてる消磁回路です。また、漏れる磁力が減ることでギャップ間の磁力線を増す効果があります。


磁石から出る磁力線はN極とS極を繋ぐ様に流れます。一般的にこれらの商品の場合最も単純なものは右のように磁石を2個使用したものが考えられますが、2個の磁石を燃料配管をはさんで単に並べただけでは磁力線が配管以外の場所も通るため磁力が漏れてしまいます。
ですが、右のように鉄などの磁性体をコ字型にすることで磁性体内に磁力線が流れることで外部への磁力を遮断することが出来ます。ですが、漏れる磁力線もあります。


この漏れる磁力線をどうするか?ですが、このようなヨークをさらに磁性体で覆うようにするともっと磁力が漏れにくくなります。
ここからは取り留めなく思いついたことを色々と考えて行きたいと思います。


磁石の耐久性ですが、保磁力という値がありこの値が大きい方が時間経過による磁力の弱まりと言うのが少なくなります。
左から弱い順に並べると、
アルニコ磁石<フェライト磁石<サマコバ磁石<ネオジウム磁石
となります。長く使いたいのであればネオジウム磁石を選択することになります。


ですが、燃料配管に装着する場合周辺温度を考えなければなりません。エンジンルームは停止状態で高温70〜80℃(by BM)になるため温度上昇に対して磁力が弱まるものは避けなければなりません。
この車の場合装着できる場所はミッションを挟んで触媒の反対側になります。ここ以外はすべて金属配管になっているため装着することができません。何故金属配管に装着できないのかというと、配管に使用されている金属は通常磁性体です。磁力は磁性体内に流れやすいので内部に流れる燃料に磁力線が通過できなくなってしまいます。このため磁石系の装着はゴムパイプとなっているわけです。


さて話を戻して、温度上昇に対して磁力が変化しやすいものを左から順に並べると、
フェライト磁石<ネオジウム磁石<サマコバ磁石<アルニコ磁石
となります。
その磁力の強さから使用されているネオジウム磁石ですが実は温度変化に対して磁力が減少しやすいのですよね。
これらの中からネオジウム磁石とサマコバ磁石を取り上げて20℃の磁力を100%として温度変化を見てみると

20℃ 50℃ 100℃ 200℃ 回復可能上限値
ネオジウム磁石 100 95 90   70℃(通常品)
サマコバ磁石 100   95 85 300℃

となります。
ですが、ネオジウム磁石は180℃まで使用できるタイプもあるそうです。この値が回復可能上限値かどうかはわかりませんが、通常品より高い温度まで使用できるということなのでしょう。


ネオジウム磁石

長所

  • 最も強力な磁力を発生する
  • 機械的強度に優れる
  • サマコバ磁石より安価

短所

  • 使用可能温度が低い
  • 錆び易い(ニッケルメッキを施すことで対策)

サマコバ磁石

長所

  • ネオジウム磁石の次に強力な磁力を発生する
  • 高温での使用にも耐える
  • 錆び難い

短所

  • 他の磁石に比べると高価
  • 機械的強度が低い

となります。
以上のことから燃費向上アイテムとして使用する場合、耐熱タイプを選択するという条件付でネオジウム磁石が良いという結論になります。
株式会社二六製作所で角型耐熱磁石として販売されているものは

品番 表面磁束密度[mt] 吸着力[kg] 重量[g] 長さ[mm] 幅[mm] 厚さ[mm] 備考
NK030 310 5.5 18 30 20 4 ネオジウム
NK033 360 7.5 18.9 30 12 7 ネオジウム
NK034 450 8 18.9 30 12 7 ネオジウム
KK033 320 4.3 10.08 20 12 5 サマコバ

の4種類が紹介されています。


燃料パイプを2個の磁石で挟んだイメージはパイプを長さ方向で直角に切ると右のようになります。なおヨークは省略しています。
薄緑色の線は仮想磁力線(私が勝手に引いた線)です。磁力線はなるだけ最短距離を通るようになりますが、線同士は反発するという性質を持っています。


流れている燃料に対して磁力線の本数を増やしたい場合はいくつかありますが、

  • 磁力の強い磁石を使用する
  • 磁石同士の間隔を狭くする
  • 面積の大きい磁石を使用する

ということがあるとおもいます。

もう少し具体的に計算を行ってみたいと思います。
計算に使用したのは磁石簡易計算シート by 日立金属です。リンク先ページの注意事項をよくお読みになった上で以下をご覧ください。
この車の燃料パイプ(非金属チューブ)の外径は14[mm]でした。この値を磁石同士のギャップとして計算を行ってみました。
なお計算に用いた磁石は日立金属HS-55HA:残留磁束密度1.5[T]で、長さは右上の図で奥行きを表し、幅は水平寸法(横幅)、厚さは垂直寸法(高さ)を表します。
グラフの横軸は水平位置[mm](0が片方の磁石表面、14がもう片方の磁石表面)を表し、縦軸は各垂直位置での磁束密度[T]を表します。


Set1
磁石寸法
長さ:30[mm]
厚さ:7[mm]
として幅を変えて垂直位置に対して磁束密度がどの程度得られるのかを考察してみました。


幅が12[mm]の場合パイプ外径よりも小さいためパイプ中心部である7[mm]周辺において磁束密度が減少していることから、磁力線がパイプの外側に多くあるということがわかります。
次に24[mm]の場合ではパイプに対して磁石の幅が大きいため磁力線の漏れが少なくなり7[mm]周辺において磁束密度の減少が少なくなります。
36[mm]の場合はパイプに対して磁石が十分大きいため線の勾配がより緩やかになります。


Set2
次に磁石寸法
長さ:60[mm]
厚さ:7[mm]
として幅を変えて垂直位置に対して磁束密度がどの程度得られるのかを考察してみました。


Set1の時と同じ傾向ですが、全体的に磁束密度が減少しています。
長さがパイプ外径と比較して極端に大きいと磁束密度が減少してしまうことがわかります。


Set3
次に磁石寸法
長さ:30[mm]
厚さ:14[mm]
として幅を変えて垂直位置に対して磁束密度がどの程度得られるのかを考察してみました。


Set1の時とほぼ同じ傾向が得られています。
ですが、全体的に磁束密度が増加しており幅が36[mm]の場合ではパイプ内部の磁束密度が均等に高くなっています。
磁石を2枚重ねあわしても磁束密度は2倍になりませんが、重ね合わせることで磁束密度を増加させることができます。


Set4
次に磁石寸法
長さ:30[mm]
厚さ:7[mm]
は最初と同じですが、磁石をHS-28FV:残留磁束密度1.085[T]として幅を変えて垂直位置に対して磁束密度がどの程度得られるのかを考察してみました。


残留磁束密度が少ない磁石を使うことで全体的に磁束密度が減少しています。


Set5
次に磁石寸法はSet3と同じですが、磁石同士のギャップを12[mm]にしたときにどのような傾向が得られるのかを考察してみました。


磁束密度が高くなったため縦軸のスケールが変わっていることに注意してください。
傾向はSet3と同じですがギャップが小さくなったことから磁束密度が全体的に向上していることがわかります。


結論

以上のことから以下の結論を得ることができました。
今回磁石簡易計算シート by 日立金属を使用して計算を行った結果、磁束密度を高くするためには

  • 磁力の強い磁石を使用する
  • 磁石を重ね合わせることで磁力が強くなる
  • 磁石間のギャップを少なくする

という予測していた結果が得られた。
また磁石寸法は長さ、幅共にパイプ外径の2倍程度が適していると考えられます。


次に排気量を考慮に入れると排気量が大きくなるほどパイプ内部の流速が大きくなります。厳密に言うと出力が大きくなるほど流速が大きくなっていきます。
効果が得られたと公表している製品についてトルクカーブを見ると主に低中回転域でトルクが増加していますが、高回転域ではそれほど増加していません。このことから流速が大きくなるほど燃料の変化が少なくなっていると言えます。
では具体的にどのくらいの磁束密度を与えると燃料が変化するのかということですが…理論的に証明されていないので調べることができません。
ですが、流速が高くなっても効果を得たいというのであれば磁石寸法は磁束密度を考えるとおおよそ決定されるので数個装着し、滞留時間を長くすることで効果を得ることができると考えられます。
ただし、大幅なトルク向上はエンジンの寿命を縮めてしまうので街乗りで使用する回転数まででのトルクアップを目指したほうがいいと考えられます。
このあたりは実際に作成して最適な個数を見つけるしかないのでしょうね。


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