LEDの諸元

LEDの性能を見るうえで光の単位と言うものは避けて通れません。ただ、光の単位はちょっと見ただけでは難解なのであるていど飛ばし読みされても良いと思います。


さて、LEDは数社から販売されており、その中から自分の使用目的に合ったものを選ぶことになりますが、まず商品には何でも緒元があります。


例えば
品番 ***(20度) 9200[mcd] 3.6[V] 20[mA]
***(70度) 690[mcd] 3.6[V] 20[mA]
などと書かれています。


ここで20度や70度とは光を照射する角度のことでLEDの先端を原点としてその角度の範囲を光が通過するようになっています。当然角度が狭ければ一点集中状態になり、角度が広ければ拡散状態になります。LEDについて一般的にいえることですが、これは光の指向性が大変強い性質があります。つまり光を広げることが難しいと言えるでしょう。


その次に9200[mcd]や690[mcd]についてですが、この単位は光度:cd(カンデラ)となり単位の前にmがついているので値は表示されている数値の10-3(1000分の1)となります。つまり9200[mcd]=9.2[cd]、690[mcd]=0.69[cd]となります。
cdとは何かと言うと「光源の強さを表す単位」のことです。と言うことはこの数値が大きくなるほど光は強くなるのですが、LEDの場合光を照射する角度が大きくなれば光は弱くなってしまいます。


cdは単位と言うくらいなのでその定義は国際単位系(SI)で以下のように定められています。
周波数540×1012[Hz](波長555[nm]:緑色)の単色放射を放出し、所定の方向におけるその放射強度が1/683[W/sr]であるその光源のその方向における光度
ここでsrとは点光源の位置から任意の仮想球を考え球の表面積が球の半径の二乗となる円の直径と点光源を結ぶ2本の線の角度のことです。
なぜ555[nm]の波長を用いるのかと言うと人間の目の感度がもっとも高くなるからだそうです。
ただし、光の範囲外のことは基準で定められていません。つまり所定の方向以外の場所での光度については考えられていないと言うことです。例えばLEDの場合は指向性が強いので所定の方向以外の場所での光度は低くなり光を照射する範囲以外では光度は非常に低くなります。
また、555[nm]以外の波長光の光度(N[nm]とする)はエネルギーが555[nm]の光を出したときのエネルギーと等しい値をcd数で表している(と思います)。つまり、555[nm]の波長だとどのくらいのエネルギーを発生させているのかと言う値でしょう。


cd単位の厳密な定義により厳密な計測が行えるようになりましたが、555[nm]以外の波長あるいは広い波長分布を持つ(例えば電球など)光源の光量を求めるにはcdだけでは不十分となります。このため光の量の単位として光束:lm(ルーメン)と言うものがあります。


この定義は
人間の目でもっとも感度の高い555[nm]を含む360〜830[nm]の光をその周波数ごとに分光視感効率V(λ)を掛けてこの波長の範囲で積分したものである。
また、光束の単位は全ての方向に1[cd](555[nm])の光度を持つ光源が、立体角1[sr]内に放出する光の量である。


分光視感効率とは
人間の目が感知できる波長と言うのは360〜830[nm]の光だと言われています。555[nm]の光は人間の目にとって最も感度の高い光ですが、それ以外の波長については感度が低下したり感知できる波長以外の光では感知できなくなります。赤外線、紫外線などは太陽から降り注いでいますが人間の目ではその成分の光を感知することは出来ません。わかりやすく言うと555[nm]以外の波長の光は感度が下がります。分光視感効率とは各波長成分の光について人間の感知のしやすさを表したものです。


う〜む、難しい・・・ ですが、この単位は他の全ての測光量の基本となる値です。また、量としては光束が基本ですが、単位としては光度:cdが基本となっています。
また、他の単位(m,N,J)などと異なり唯一人間の感覚(分光視感効率)が含まれた単位だそうです。
わかりやすく言うと全方向に照射される波長の光を各波長ごとにその波長における人間の感知のしやすさを掛け全ての波長を足したものです。
光の単位がcdだけでは不十分だと言ったのはこのためです。cdでは標準器でエネルギーを測り555[nm]の光のエネルギーと比較するため、人間の感覚は介入されていません。たとえば1000mcdの光でも人間が認識しにくい波長だとlm数は低いと思われます。


ただし、光というものは光を発する場所から遠くなると暗くなります。と言うことはcdで明るさを表すのは無理なので別の単位が必要になってきます。その単位とは光度、光束とともに基本単位として使われる照度:lx(ルクス)です。


その定義は
光を受ける点を含む単位面積あたりに入射する光束の量[lm/m2]で表される。
つまり、照度1[lx]は、面積1[m2]あたりに、光束1[lm]の割合で光が入射していることを示している。
また、照度:Eは発光面と受光面との距離:l(単位:m)との逆二乗則と光度:Iから
E=I/l2
と表すことが出来る。
例えば100[W] 130[cd]の光源があり1[m]と0.5[m]の距離で受ける光の強さはそれぞれ
1[m]:130/12=130lx
0.5[m]:130/0.52=520lx
となります。これを使うとある場所である光の強さが欲しい場合は光源までの距離がわかれば光源にどの程度のcd数のものを使えばよいかがわかります。


まとめるとcdは光が照射されるある一点の光の量をあらわし、lmは照射する光の総量に人間の感覚を掛けたものをあらわし、lxは光源から任意の距離が離れた場所での光の量をあらわしています。


ふう〜 難しかった。
そもそも光と言うものは最も身近でもっとも大切なものですが、その単位を考えることは我々の生活において非常に少ないのが現実です。このためHPを検索すると単位同士の関係を間違って記載していたり、説明が不足していたりします。ここの話は多分間違っていないと思いますが、“違ってるよ!”と言うところがありましたらぜひ指摘していただきたいと思います。


3.6[V]はLEDの定格電圧、20[mA]はLEDの定格電流のことで定格を超えて使用すると寿命が短くなります。ただし、フラッシュライトのような使い方や使用時間をある程度制限することで定格電流はより多く流すことが出来るようです。事実LEDの定格電流は20[mA]ですが、ストップランプのように使用時間が制限されている場所では50[mA]ほどを流すようにしているそうです。これは必要以上の耐久性を求めるよりもコストダウンを考えられた結果だと思います。
また、寿命を考えると20[mA]を絶対に越えてはいけないかというとそうではありません。LEDを使用する場所の温度によって流すことの出来る電流には差があります。この20[mA]と言うのはLEDの使用最高温度である80[℃]の場合であり使用温度が下がればもう少し電流を増やすことが出来ます。表を例にあげて説明できれば良いのですが、著作権に関わりそうなので控えさせていただきます。詳しくはLEDメーカーのHPをご覧ください。


参考文献
1) 小貫英雄、齊藤一郎、蔀 洋司、側垣博明、三島泰雄:光放射標準と計測技術の研究;側光・放射標準 電子技術総合研究所


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