損失のお話

実際のエンジンは必ずしも理想的なサイクルで作動しているわけではありません。

実際のエンジンには色々な損失があります。結論から先に言うと、損失を減少させる=高出力化につながるという事です。

損失についてもう少し詳しく述べると、これには摩擦損失(フリクションロス)、ポンピング損失(ポンピングロス)、補機損失、その他の損失があります。

フリクションロスが発生する場所は

クランク系の摺動抵抗 ― クランクピン、メインジャーナル、メタル、バランス率
ピストンの摺動抵抗 ― ピストン、ピストンリング、シリンダー壁面
ピストンのスラスト抵抗 ― ピストンスカート、コンロッド長さ
オイルの攪拌抵抗 ― クランクシャフト、オイルパン、オイルの粘性、油圧
動弁系 ― カムシャフト、バルブリフター、スプリング、バルブ
動弁系の摺動抵抗 ― カムシャフト、バルブリフター、スプリング、バルブ

などがあります。
これらにはエンジンの高回転化に伴い損失(ロス)が急激に増加するものとそうではないものがあります。
その増加度は上に書いた順(上から順に増加度が多くなる)になると言われています。
つまり、損失を減少させるには上から順に減少させるほうがより効果が大きくなるという事です。

ポンピングロスとは吸排気損失のことで吸気抵抗や排気抵抗のことです。
これらが発生する場所は

吸気抵抗 ― エアクリーナー(材質、形状)、エアフロメーター、吸気管(長さ、形状)
スロットル、ポート(長さ、形状)
排気抵抗 ― ポート(長さ、形状)、エキゾーストマニホールド(太さ、長さ、形状)、タービン
触媒、排気管(長さ、形状)、サイレンサー

などがあります。
吸気抵抗を減少させる最も簡単な方法はエアクリーナーを取り除く事ですが、そうするとエンジンに塵(ダスト)が進入するため寿命が短くなります。また、ラジエターの熱を吸う事により酸素密度の低下が発生し出力が減少する可能性があります。
じゃあどうすればいいの?ということですが、熱気を吸わない形状で出来るだけ抵抗の少ないものにすれば吸気抵抗を減少させる事が出来ます。具体的にはエアクリーナー付近に遮熱板を設け外気を導入するパイプをつけるなどがあります。

排気抵抗を減少させる方法はサイレンサーを取り除くと抵抗は格段に減少しますが、地球環境に悪影響を及ぼすためにスポーツ触媒に交換する方法がこれからのチューニングとなると思います。
抵抗を減らすほかの方法としては排気管が太く、サイレンサーがストレート形状のものに交換するという事があります。
ただし、闇雲に排気管を太くするとトルクの減少が発生しサイレンサーが無い形状のものにすると爆音を撒き散らしてしまいます。

トルクの減少について話が出ましたが、じゃあトルクの出る太さは?というとエンジンやその他の周辺パーツにより異なるという答えが出ます。排気管の太さを最適にして要求するトルク、出力を得られるようにする事=チューニングという事です。つまりチューニングとはバランスを取るということです。

補機損失は発電機(オルタネーター)などが含まれこれはエンジンに付随するものです。

その他の損失は熱損失(=燃焼行程もしくは膨張行程でシリンダーヘッドやシリンダライナーなどへの熱の移動により発生したり排気温度が高いことも含まれる)があります。
熱損失は燃焼ガスと周りの物質との温度差を無くせば発生しなくなりますが、温度差を無くする=壁面の温度が金属の融解温度に達するため現状では不可能です。

熱損失のうち排気温度が高い事による損失とは以下のとおりです。
排気温度が高いという事は膨張行程でピストンに十分エネルギーが伝わっていないためであり、ピストンに十分エネルギーが伝わっていれば排気温度は低くなります。温度=熱量であり、エンジンは熱エネルギーを運動エネルギーとして取り出す装置なので排出する熱が少なければそれだけ多くの運動エネルギーを取り出せるという事になります。
この中にはエンジンが定常状態で運転してあるという前提があります。
非定常状態ではエンジンの回転数が高くなればなるほど排気温度は高くなるはずです。(たぶん・・・)

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