タイヤに窒素ガスを入れることが何時からか流行っています。何時頃かは忘れましたが…何年か前のような気が。
その前に窒素ガスはどんなところで使われているかと言うと航空機、レーシングカー、地下鉄、建設車両
e.t.c.にすでに使われていたらしいです。
で、空気の変わりに窒素を入れることでどんなメリットがあるのかというと
らしいです。
私の知っている方でも窒素を入れると良くなったと言っている人がいましたが、正直“本当かな?”と疑っていました。
機会があり窒素ガスを入れてみたところ体感できるほどの効果がありました。
具体的には今までフロント250[kPa]、リア265[kPa]で走っていましたが、窒素でははじめ270[kPa]、リア290[kPa]入れてしまっていました。と言うのは私が使っているゲージとお店で使っているゲージの値が違っていたせいです。いつも使っているゲージと違うので少し高めに入れたせいと、あとで自分のゲージで調整しようと思ったせいもありますが…
一応いままで自分のゲージで圧力を設定していたためこっちを信用することにします。
で今までよりも圧力を高く設定しているにもかかわらず振動が減った気がします。
細かいギャップではあまり分かりにくかった(振動が減ったことは分かる程度)でしたが、すこし大きなギャップでは車体が安定するようになりました。あとフロントの入りもいい感じになった気がします。ただエアを入れすぎていたせいか雨の日のグリップは非常に悪かった気がします。
今までと条件が違うので比較にならないかもしれませんが圧力が高いにもかかわらずNVHは改良されたようです。
とりあえず自分のゲージで圧力を調節しておいたので明日からの通勤がどうなるか楽しみです。それにあわせて走行後の圧力も測ってどのくらい変化があるのか確かめたいと思います。
その後効果は…わからなくなりました。普通です。(笑)
良くも悪くも無い。窒素を入れていると言われると“ふ〜ん”という感じです。私の場合だと窒素は必要ないのかも?わざわざお金を出して入れる必要はなくいつでもタイヤの空気圧チェックができる空気の方が私の場合はメリットがありそうです。
と言うことで何故窒素ガスを入れると良くなるのか?についてじっくり考えてみたいと思います。
まず窒素は不活性ガスとして知られています。不活性ガスとは言葉のとおり活性が無い=他の物質と反応しにくいということです。
反対に酸素は活性ガスと言われています。活性とは物質がエネルギーや光などにより活発になり反応速度が速くなる性質のことで、活性が高くなると酸素の場合酸化が促進されます。
酸化するとはどういうことか?酸化とはある物質が酸素と化合すると言う意味で、例えば金属に錆が発生するのは酸化しているからです。物が燃えると言うことも酸化です。燃焼とは激しい光と熱を伴った酸化です。
酸化は当然酸素が無ければ起こりません。
と言うことは窒素ガスを使うメリットとしてはタイヤ内部に酸素が少なくなる(無くなりはしません)ことで酸化が起こりにくいと言うことがあります。ただ外側(トレッド面など)には十分な空気があるんですけど…
内部に酸素がなくなるというメリットは本当にあるのでしょうか?レースではタイヤのトレッド面温度は約80℃と言われていますが、タイヤ内部温度は…Air Inspectorを装着していれば分かるのですが残念ながら私は装着していないので分かりません。まあ装着していたとしても街乗りでの温度しか分かりませんけどね。
次に気体の性質から空気は窒素・酸素・二酸化炭素・その他の混合物です。
その割合は
気体 | 体積割合[%] |
窒素 | 71 |
酸素 | 20.5 |
その他 | 0.5 |
程になっています。
気 体 |
分 子 式 |
原 子 数 |
分子量 | 気体定数 | 標準密度 | 比熱 | モル比熱 | 比熱比 | ||
M | R [kJ/(kg・K)] |
ρ0 [kg/mN3] |
Cp [kJ/(kg・K)] |
Cv [kJ/kg・K)] |
Cp [kJ/(kmol・K)] |
Cv [kJ/(kmol・K)] |
κ=Cp/Cv | |||
酸素 | O2 | 2 | 31.9988 | 0.25983 | 1.42900 | 0.9141 | 0.6538 | 29.26 | 20.93 | 1.399 |
窒素 | N2 | 2 | 28.0134 | 0.29680 | 1.25046 | 1.039 | 0.7425 | 29.13 | 20.80 | 1.400 |
空気 | - | - | 28.964 | 0.28706 | 1.29304 | 1.005 | 0.7157 | 29.09 | 20.76 | 1.402 |
水蒸気 | H2O | 3 | 18.0513 | 0.46151 | - | 1.861 | 1.398 | 33.53 | 25.19 | 1.33 |
まず、走り出す前のタイヤ内温度をT1=20[℃](293.15[K])、圧力をP1、走行後のタイヤ内温度をT2=80[℃](353.15[K])、圧力P2をとします。
このとき理想気体の状態方程式を使うと(タイヤはゴムなのですが考えやすくするため体積が一定の剛体と考える)
P2=T2÷T1×P1=1.20×P1
となりタイヤ内の気体の種類にかかわらず圧力はおおよそ1.2倍に増加することになります。
と言うことは何でもいいということに…
ですが、レースで使用されていることも事実。
と言うことは結局何が効いているのかと言うと空気に含まれる水分でしょう。水蒸気の気体定数などを見ても他の気体と比べてかなり大きくなっています。
まあ水蒸気100%(飽和蒸気)と言うことは無いでしょうが、少なくとも(相対)湿度が0%と言うことも無いでしょう。
結論ですが、窒素を入れることで様々な効果が得られると言うのではなく、水分を含まない気体を入れることで圧力変化などが少なくなり効果が得られると言うのが正解だと思います。
で、他にも色々ガスがあるのですが何故窒素なのかと言うことですが、良く見るボンベは7000[L](7[m3])入り150kgf/cm2(15[MPa])になっています。このボンベ外側は当然回収して有効期限が来るまで使われるのですが、ボンベ1本当たり数千円と非常に安いものです。ただし、ボンベだけでは使うことが出来ないのでレギュレータと言われる減圧弁が必要になってこれが1万数千円〜となります。
導入コストがそれほど高くなく、維持費もほぼ必要なし。何より減価が安く利益率が高いので良く使われていると言うことです。