ブレーキパッド温度と摩擦係数

ブレーキパッドはバックプレート(裏金)と摩擦材により形成されておりローターと接触するのは摩擦材、ピストンが接触する(ピストンとの間に鳴き止めなどがある)のはバックプレートとなります。バックプレートと摩擦材とは接着剤などで接着されています。


摩擦材には鳴き難い材料、磨耗しにくい材料、熱伝達係数の低い材料、材料同士を接着する材料、耐熱性のある材料など様々な材料が含まれています。どの材料を使うか、また材料の含有割合などはブレーキメーカーのノウハウになってきて狙った性能を発揮するためにメーカーは日々開発に追われています。


これらの材料はそれぞれトレードオフの関係があり、たとえば鳴き難い材料は耐熱温度が低く耐熱温度が高い材料は鳴き易くなっています。


しかしパッドそのものの役割(ブレーキそのものの役割)を考えるとこれは運動エネルギーを熱エネルギーに変換する装置です。したがって大きな減速をする場合・重い重量の運動物体を減速する場合大きな運動エネルギーを熱エネルギーに変換しなければなりません。その熱エネルギーはどこへ行くかと言うと最終的には大気中に開放されますがそのまえにパッドとローターへ蓄えられます。もっと言うとパッドとローターの接触面から双方の奥のほうへ熱が伝達します。
この項目はパッド温度と摩擦係数の話なのでローターはおいてハードブレーキングを繰り返すとパッド温度はどんどん上昇してきます。パッド温度が上昇するとどうなるかと言うと摩擦係数が低下していきます。これをフェードと言います。


その温度はパッドごとに異なり一般的にパッド(若しくはローター)適正温度と表記されていると思います。
あくまで一般的という話ですがストリート用のパッドは鳴きが少なくローターの温度が低い状態でも摩擦係数が高い反面温度上昇に弱い傾向があり、サーキット用のパッドは鳴きが多めでローター温度の低い状態では摩擦係数が低いのですがストリート用のパッドより高い温度域で摩擦係数の安定性に優れ最高使用温度も高い傾向があります。
何故このようなことがあるのかというとすでに述べたようにパッドごとに目標とする温度域が異なるからです。
ストリート用は冬の一発目のブレーキでも効かなければならずそれほどハードブレーキをする必要がないのでこれらを目標に、サーキット用はハードブレーキを繰り返すため高温での摩擦係数安定性が目標にあるからです。


パッドごとの温度と摩擦係数はあまり公開されておらず(あるメーカーは教えてくれましたが公開は止めてくれといわれました)インプレッションを参考にしなければなりませんが、PAGIDは公開されているのでデータを拝借しました。


PAGIDからはレーシングパッドとしてRS14B、RS4-4、RS4-2の3種類がありますが、それぞれ用途が異なっています。
まずRS4-2は低温から高い摩擦係数を発揮し温度変化に対しても安定した性能を発揮します。
RS4-4はRS4-2よりもさらに低温から高い摩擦係数を発揮します。
RS14BはRS4-2とRS4-4と比べて低温での効きは劣るものの摩擦が少なく耐久レース向きだそうです。


PAGIDのレース用パッド3種類を取ってみてもこれほどの違いがあるので他メーカーの様々な用途のパッドでは様々な温度と摩擦係数の関係があるのです。


パッドの使用温度、摩擦係数、相互の関係などでパッド性能を完全に推し量ることは出来ませんが、これらの情報があればパッドを選ぶ目安になると考えられます。

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